鎭火祭|延喜式祝詞 訓読/正読/原文
高天原に神留り坐す 皇親神漏義・神漏美の命持ちて 皇御孫命は 豊葦原の水穂國を 安國と平らけく知し食せと 天下寄さし奉りし時に 事寄さし奉りし天都詞太詞事を以ちて申さく
神伊佐奈伎・伊佐奈美の命 妹妋二柱嫁継ぎ給ひて 國の八十國・嶋の八十嶋を生み給ひ 八百万の神等を生み給ひて 麻奈弟子に火結神を生み給ひて 美保止焼かえて 石隠り坐して 夜七日・昼七日 吾をな見給ひそ 吾が奈妋の命と申し給ひき 此の七日には足らずて 隠り坐す事奇しとて見そなはす時に 火を生み給ひて 御保止を焼かえ坐しき 如是る時に 吾が名妋の命の 吾を見給ふなと申すを 吾を見あはたし給ひつと申し給ひて 吾が名妋の命は上津國を知し食すべし 吾は下津國を知らむと申して 石隠り給ひて 与美津枚坂に至り坐して 思ほし食さく 吾が名妋の命の知し食す上津国に 心悪しき子を生み置きて来ぬと宣ひて 返り坐して更に子を生みたまふ 水神・匏・川菜・埴山姫 四種の物を生み給ひて 此の心悪しき子の心荒れびるは 水神ー匏 埴山姫ー川菜を持ちて鎮め奉れと 事教へ悟し給ひき
此に依りて称辞竟へ奉らば 皇御孫の朝庭に御心一速び給はじと為て 進る物は 明妙・照妙・和妙・荒妙・五色物を備へ奉りて 青海原に住む物は 鰭広物・鰭狭物 奧津海菜・辺津海菜に至るまでに 御酒は𤭖の辺高知り 𤭖の腹満て竝べて 和稲・荒稲に至るまでに 横山の如く置き高成して 天津祝詞の太祝詞事を以ちて 称辞竟へ奉らくと申す
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『延喜式』卷第八|神祇八|祝詞 延喜5年(905)〜延長5年(927)